千葉県成田市で起こった事件

　９９年１１月１１日、千葉県成田市内の高級ホテルの一室でミイラ化した男性の遺体が発見されました。遺体の男性は「ライフスペース」のセミナーに参加していた６０代の元会社員です。同じ部屋には６０代の女性と若い男性が付き添っており「まだ死んでいない。治療中だ。」と主張しました。

　この事件は、高級ホテルの客室からミイラ化した遺体が発見されたことに加えて、遺体に付き添っていたライフスペースのメンバーが「治療中である」と主張したこと、指導者高橋弘二がグルと名乗り独自の「定説」を口にすること、などにより、一般の人々の関心を引き、「千葉成田ミイラ化遺体事件」として国内はもとより海外でも広く報道されました。また、集団生活を強いられていた子どもたち（参考１、参考２）のうち、家宅捜査のとき居合わせた９名が無事保護されました。

　以下は事件の概要をまとめたものです。病院から連れ出され遺体となって発見されるまでの経緯は判決文の中で明らかにされています。

　１９９９年

６月２４日	小林晨一さんが兵庫県内の自宅で脳内出血で倒れ、同県内の市立○○病院に入院。
７月２日	小林さんの長男他ライフスペースのメンバー数人が早朝に病院を訪れ、小林さんを「退院させたい」と言い出し、病院側の「今の状態では無理」との制止を振り切り車で連れ出した。
１１月１１日	ミイラ化した遺体の発見：千葉県成田署の署員が、成田市内のホテルの一室で死後かなり経過したと思われる男性の遺体がベッドに寝かされているのを発見。同室の６０代の女性と若い男性は「まだ死んでいない。治療中だ。」と主張。
１１月１３日	成田署の調べで、この男性が兵庫県川西市の元会社員小林晨一さん（６６）と断定、また一緒にいた６０代の女性と３０代の男性は妻と長男であること、自己啓発セミナー主催団体「ライフスペース｣が関与していることが判明。
１１月１８日	高橋弘二元代表らが茨城県○○町のホテルで記者会見、「小林さんは回復の最中で、もう少しで生き返るところだった」など「定説」を繰り返した。
１１月２４日	家宅捜索：千葉県警特別捜査班が「ライフスペース」の関連団体「シャクティパットグル・ファウンデーション」（ＳＰＧＦ）の事務所数カ所を被疑者不詳のまま死体遺棄容疑で一斉に家宅捜索。家宅捜索されたのは、東京都内や名古屋市内の事務所、「ライフスペース」の高橋弘二元代表（６１）ら主要メンバーが滞在していた茨城県○○町のホテルなど。子供の保護：東京都新宿区箪笥町の八階建てマンションにあるＳＰＧＦ東京事務所では、捜査員約十五人が午前九時すぎ、六階と八階の計二部屋に入り、捜索が始まった。捜索に合わせて新宿区箪笥町のマンションにいた九歳の男子と十歳、十一歳の女子、文京区関口のマンションにいた十三歳から十七歳の女子六人、計九人が保護される。
	参考記事：子供にミイラ"看病"させ、学校にも通わせず（2000年1月28日毎日新聞）

　２０００年

２月２２日	容疑者の逮捕：千葉県警特別捜査本部は高橋弘二容疑者（６１）と同容疑者の妻（３８）、小林さんの妻（６１）と長男の健児容疑者（３１）ら八容疑者を保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕。
３月２日	子供の人権侵害、調査申し入れ：「考える会」が、ライフスペースの関連施設などで生活していると見られる子供たちについて、日本弁護士連合会に「ライフスペースによる子供の人権侵害の調査申し入れ」を申請、受理される。
３月１４日	殺人罪で起訴：千葉地検は高橋弘二容疑者（６１）を殺人罪で、小林さんの長男健児容疑者（３１）を保護責任者遺棄致死罪で千葉地裁に起訴。
	参考記事：高橋容疑者に殺人罪（2000年3月15日朝日新聞）
３月２４日	「カルト裁判」ライフスペースの請求棄却－東京地裁　テレビ番組などで「カルト」と呼ばれて名誉を傷つけられたと主張して、フジテレビや出演した弁護士らに謝罪広告を求めた訴訟で、東京地裁はライフスペース側の請求を棄却。ライフスペースのセミナー「風呂行」で死者が出たことなどから、弁護士らによるカルト発言は「相当の理由がある」と結論づけた。
７月４日	高橋弘二被告初公判高橋被告は起訴事実を前面否定。