ライフスペースの子どもたち -- 集団における虐待 --
子どもの虐待には「子育ての放棄」「心理的虐待」「ネグレクト（放置）」「不潔な施設内での不十分な食事」
「性的な虐待」など様々な形がある。
このうち報道されるのは、ごく一部の死亡などに至ったケースのみである。そうでない場合は、深刻な状態であっても、
外見上だけでは、なんとなくおかしいと思いつつも虐待であることに気がつかなかったり、見過ごされがちになる。
ライフスペースの場合は「成田ミイラ事件」がきっかけで、集団生活を送っていた子ども９人が保護された。
９人の子どもについて、学齢期の子どもは学校に行っておらず、学力も通常の子と比べて２〜３年遅れていたものの、
幸いなことに身体的な虐待の痕は確認されなかった。しかし、これが虐待がなかったことの証明にはならない。
むしろ、直接的な暴力のみに目が奪われ、子どもたちが置かれていた状況が見過ごされがちになった。
以下は事件以前の状況であるが、これが虐待ではないと言えるであろうか。
＜成田ミイラ事件以前、子どもたちが置かれていた状況＞
ライフスペースでは約４０人近く（半数が学齢期）の子どもが集団生活を余儀なくされ、
９４年頃にはすでに未就学の児童がいた。
高橋弘二が親達をセンター内で深夜まで働かせていたので、あるメンバーの子ども達は朝方まで起きてひたすら親の帰りを待ち、
その結果、朝起きることができなかったり、学校嫌いになっていった。その後、子どもたちをスペインのマヨルカ島、インド、
米国ダラスなどメンバー以外の目が届かない海外のライフスペース施設に送り出す。また、一部の子どもをホテルの一室や、
拠点となっているいくつかのアパートで集団生活をさせている。
子ども達の海外送り
９５年頃より子ども達のスペイン・マヨルカ島送りが始まり、９７年頃まで数人単位で数回、親の同伴なしで送られる。
現地スタッフはビザの関係上数ヶ月ごとに替わるので、責任を持って長期的に世話ができる大人がいない。
親からの仕送りも途絶えがちで、子ども達は不安になり病気になる子も出てくる。
９８年、子ども達のビザの更新が拒否されたので、ビザが切れた子どもから帰国。しかし、高橋弘二はサイババのメッセージと称して、
「ビジョンだから、ニューヨークの学校に入れなさい、サイババの学校に入れなさい。」などと指示。
スペインの建築中の家には大人、子どもが無理やり送り込まれ、電球のない部屋で寝袋にくるまり、
台所がないので床にコンロを置き、庭の水道を使うというような生活を強いられる。５才以下の子どもも親から離され、
外国に連れて行かされるようになる。
９９年、何人もの子どもがビザ切れのたびに自費でインドやダラス（米国）、スペインと移動させられ、
1才の子どもまでが親と切り離されてスペインに送られる。楽しく学校に通っていたのに、突然スペインに行かされた子ども、
サイババの学校に入学できると高橋弘二に言われたのに入学できず、長期間学校に行っていない子どもなどもいた。
事件後、あるテレビ局が米国ダラスのライフスペースの施設に取材に行っているが、メンバーはこれを拒否している。
東京都内高級ホテルでの集団生活
９８年夏頃、高橋弘二が女性メンバー数人と滞在していた都内の高級ホテルでは、子どもが２０人ほど親と離れてツインの部屋に入れられ、
深夜に寝て翌日昼頃起きる生活。毛布も少なく、床に雑魚寝、おねしょもひどい状態。学齢期の子どもは学校には行っていない。
教えてもらうのは、ピアニカでバジャンの曲や、絵描き、高橋やメンバーの話（ヴィジョン、定説など）であった。
急に「目覚めのシャクティパット」と言われて一列に並ばされ、ぐずぐずする子が顔を殴らることもあった。
食事は1日千円程度のお金を渡され、自分でコンビニに行ってカップ麺、お菓子などを食べている。洗濯も自分で行い、
この頃に保護された幼い子どもの衣服、下着は汚れきっており、体もかなり臭くなっていた。
東京都内のアパートでの集団生活
９９年１１月、警察の家宅捜索で子どもが保護された東京都新宿区のマンションでは、小学生３人が集団生活を営んでいた。
子どもは学校には通っておらず、寝るときは寝袋で雑魚寝。警察関係者の話では、「布団は毛布1枚だけ。冷蔵庫は空っぽで、
食器も箸やお皿もない」という。写真週刊誌ＦＬＡＳＨ（９９年１月）の記事「ライフスペースの"育児施設"内部初公開」では、
この記事内で紹介している写真を見る限り、子どもたちが生活していた形跡は全くうかがうことができない。
３人もの小学生が普通に生活していたのであれば、衣類、寝具、食器類、勉強机、教科書、本など相当な量になるはずである。
ライフスペース側はこれを何ひとつ示してはいない。子どもたちはいったい何を与えられどのような生活をしていたのであろうか。
両親共にライフスペースのメンバーの場合は、子どもの様子が外部には伝わりづらい。
特にメンバーはライフスペース外の家族とは嫌悪な関係になり、祖父母などが
施設内の孫と自由に会うことすらできない。また、居所すら隠される場合がある。
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